資料室

バラ十字古代エジプト博物館のコレクションから 〜テーベの貴婦人〜

Treasures from Rosicrucian Egyptian Museum 〜Theban Lady RC 1603 〜

 この小さな彫像は、緑がかった灰色の結晶片岩から作られており、高さはわずか24センチメートルですが、古代エジプト文化の重要な時期を示しています。この像が作られる以前の300年ほどの間は、エジプトでは女性の像が作られていなかったからです

 エジプトにマケドニア人の王朝であるプトレマイオス朝が成立すると、そのことをきっかけにして、女性の像が再び作られるようになりました。この彫像は、一見したところ紀元前600年頃のサイス王朝時代の彫刻のように思われます。しかし、擬古調、すなわち古い時代の美術品に似せて作られたものであり、刻まれた銘文や様式の詳細から、実際の製作時期が分かります。同じ作者によって作られた、とてもよく似た同種の像から、この貴婦人像はプトレマイオス2世が統治していた、紀元前300~250年頃のものであることが判明しています。女性の像を作る伝統が絶えてしまっていたため、プトレマイオス朝の芸術家たちは、数百年前のサイス王朝時代にエジプトで作られた女性像を参考にしています。一方、サイス王朝時代の美術品は、さらに古い時代の様式から着想を得て作られています。

 残念なことに、この像のモデルとなった女性の名前は永久に分からないことでしょう。像の銘文の、名前が刻まれているに違いない部分が破損してしまっているからです。残されている部分には、カルナック神殿のアムン神(Amun)に捧げられる、標準的な祈りの言葉の最初の部分が刻まれています。この女性は、神の前に一人で立ち、威厳のあるポーズを取ることを選んだのでしょう。この像は、その時代の最も熟練した職人によって作られたものではありませんが、この女性が自身の記録を神殿内に残すために、この像を作らせたということに、彼女の信仰が示されています。彼女の名前や地位を知ることはできませんが、この像が、ここバラ十字古代エジプト博物館で他の貴重品とともに展示されている限り、彼女が忘れ去られることはありません

リサ・シュワッパハ・シリフ、文学修士
バラ十字古代エジプト博物館学芸員、副館長

 ※上記の文章は、バラ十字会が会員の方々に年に4回ご提供している神秘・科学・芸術に関する雑誌「バラ十字」(No.140)の記事のひとつです。バラ十字会の公式メールマガジン「神秘学が伝える人生を変えるヒント」の購読をこちらから登録すると、この雑誌のPDFファイルを年に4回入手することができます。

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