投稿日: 2021/12/10
最終更新日: 2023/02/17

オコン・A・オスン

健康な人の免疫システムのTリンパ球(T細胞)の電子顕微鏡写真出典:国立アレルギー感染病研究所
健康な人の免疫システムのTリンパ球(T細胞)の電子顕微鏡写真
出典:国立アレルギー感染病研究所

 バラ十字会の学習では、病気は、何らかの調和が失われた状態から生じていることを学びます。また、人間の体を構成しているひとつひとつの細胞に、意識が存在していることも学びます。したがって、病気が生じているときには、細胞のレベルで混乱が生じている可能性があります。では、細胞のレベルでの不調和は、体にどのような形で表れるのでしょうか。

ウイルスのように外界から侵入する病原体に対する防御のために、抗体と呼ばれる防御タンパク質が、体の働きにより作られます。細胞や、細胞骨格(訳注)などの細胞を構成する多くの要素に、ウイルスなどの病原体は、損傷を与えたり破壊したりすることがあります。ウイルスに感染したときに、このような抗体がどのようにして体内で作り出されるのかを説明するために、科学者はさまざまな仮説を立ててきました。細胞へのウイルスの感染、あるいはその影響に対する反応として抗体が作られるということに関して、いくつかの理論が作られています。そうした理論のひとつでは、ウイルスがある細胞に侵入したときに、ウイルスは、細胞の特定の構成要素と結びつくということが述べられています。細胞の構成要素とウイルスがある種の協力関係を構築するのです(脚注1、2)。細胞の構成要素とウイルスが協力関係を結んでできた単位(unit:ユニット)は、免疫原性ユニットとして知られています。個々の免疫原性ユニットは、体の自然免疫細胞の反応を引き起こすことができるので、そのように呼ばれており、そのような反応は、医学的には、免疫反応として知られています。

訳注:細胞骨格:細胞の形を保持し、また変化させる細胞内の要素であり、微小管と微小繊維がその役割を担っている。

ウイルスと細胞の構成要素からなるユニットは、ウイルスが完全に吸収される形で細胞の構成要素と結合したり、あるいは、隣接しているけれども個々に識別できる形で結合したりすることがあります。そして、特殊な染色法によって、細胞の構成要素から区別されるウイルスの断片が存在するのを示すことが簡単にできます。細胞骨格に関する我々の研究では、染色された物質はウイルスの断片ではなく、細胞骨格の構造をしていることが示されました。つまり、ウイルスが細胞に侵入する過程で、この構造が変化して、免疫原性となり、染色液でよく染まるようになっていたのです。

他の理論は、体の防御システムがウイルスの一部を意図的に通過させるということに基づいています。しかし、抗体と、その作用を受けるウイルスの大部分において、そのようなメカニズムには、必ずしもはっきりとした証拠が示されているわけではありません。

遺伝情報の改変

Altered Genetic Information

 より可能性の高い仮説としては、細胞へのウイルスの侵入によって、見かけ上は正常な細胞の構成要素、たとえば細胞骨格の遺伝情報が書き換えられるという仮説があります。このような場合、遺伝暗号(訳注)を変えるために、必ずしも細胞の特定の構成要素にウイルスが定着する必要はありません。感染した個体が免疫反応のプロセスを開始するためには、おそらく、細胞中にウイルスが存在していることだけで十分です。しかし、遺伝情報が改変される正確なメカニズムについては、いまだに推測の域を出ていません。しかし、粒子的な構造は、その微細なレベルにおいてさえ、このメカニズムには関与していないようです。

訳注:遺伝暗号(genetic coding):遺伝子(具体的にはデオキシリボ核酸)上での塩基の並び順のことをいう。遺伝情報、遺伝コード。

ウイルス感染が活発な段階では、2種類のT細胞の両方が刺激を受ける。
ウイルス感染が活発な段階では、2種類のT細胞の両方が刺激を受ける。

我々が遺伝学的な考え方を支持するならば、病気が発症したかどうかにかかわらず、ウイルスによる初期段階の攻撃を受けた後に、同種のウイルスによる攻撃があり、それによって体の記憶細胞(免疫記憶を保持する細胞)が呼び覚まされて、体の防御のために抗体の生産が始まるということが考えられます。ウイルスの株が体に入るたびに、細胞の構成要素は影響を受けやすくなり、その中で遺伝暗号が絶えず改変されます。そして、その改変のたびに異なる種類の抗体反応が起こります。この抗体反応にはT細胞とB細胞、すなわちリンパ球として知られているいくつかの種類の細胞が関係しています。T細胞には2つの種類があります。ヘルパーT細胞とサプレッサー(抑制)T細胞です。名前が示しているように、これらはそれぞれ、抗体の生産を活性化するか抑制します。遺伝子の改変の結果としてヘルパーT細胞が刺激されると、B細胞と協同して働き、その結果、ウイルス感染への反応として、抗体の生産が増加します。遺伝子の変化の結果としてサプレッサーT細胞が刺激されると、抗体の生産は抑制されます。

ウイルス感染

Virus Infection

 ウイルス感染が活発な段階では、2種類のT細胞の両方が刺激を受けます。2種類のT細胞のどちらが敏感かによって、その後の状況が変わってきます。ヘルパーT細胞の方がより敏感な場合は、抗体の生産が増加します。サプレッサーT細胞の方がより敏感な場合は、抗体の生産は抑制されます。通常、ほとんどのウイルス感染に対して、健康な人では、サプレッサーT細胞の方が敏感です。

何らかの理由により、ある人の遺伝子構造がいったん改変され、その後すぐにT細胞の刺激が繰り返された場合に、記憶細胞が活動を始めます。つまり、以前の感染の記憶をもとに、体を保護するのにより適した方法が決定されるのです。そのような状況では、サプレッサーT細胞が敏感になったことによって生じた最初の抗体生成の抑制を取り消すために、ヘルパーT細胞が刺激されます。このとき、ヘルパーT細胞はB細胞と協力して活動します。そして、T細胞とB細胞が協力する程度に応じて、抗体の生産の速度が、わずかに速くなるか、あるいは急激に速くなります。そうした協力は、ウイルスによりもたらされる遺伝情報の変化から体が保護される必要性に応じたものになります。

糸口を見つける

Finding a Clue

 遺伝子の改変という考え方によって、臨床や実験室で起きるさまざまな現象だけでなく、標準的で健康な人に起きる現象も説明されます。ですから、人間がウイルスに感染したときに、どのような遺伝子の改変が起きるかということを解明する努力を行うべきでしょう。病気の人の細胞から細胞骨格を分離することで、遺伝情報にどのような変化が起きているかについての手がかりが得られるかもしれません。

しかし、病気になる以前の健康な状態のときに、その人の遺伝情報がどのようになっていたかという事前の知識を基にしなくては、そのような研究を進めることはできません。通常、人が健康なときの遺伝情報が分かっているということはありません。遺伝的な病気がある場合や、臓器移植の提供者、親子関係で争っている場合などを除けば、そのような調査を行うことはめったにないからです。

病気の臓器から採取した細胞と、同じ人の明らかに健康な臓器から採取した細胞の遺伝子調査の結果を比較しても役には立ちません。遺伝情報のいかなる改変も全身に広がりやすく、ひとたび改変が起これば、別な状況によって変更されるまで、そのように改変されたままになっているからです。一卵性双生児の研究に、おそらく研究者は糸口を見つけることができるように思われます。しかし、その場合も、症状がないウイルス感染による、遺伝暗号の改変を除外することが必要不可欠です。

もし、病気によって変化する前のオリジナルの状態に遺伝暗号を戻すような状況が全身に広がるのを待つことができるならば、遺伝子研究において比較可能な状況を確立する、ひとつの方法が得られるかもしれません。しかし、臨床医にとってこれは理論上の可能性にすぎません。臨床医も患者も、遺伝情報が元の状態に再生する時期や状況を知ることができないからです。

一方バラ十字会員にとっては、そのような再生が治療の基礎になっています。再生とは、すべてが調和して、完全な状態に戻ることを意味します。つまり、調和を欠いた状態になり、それがウイルスによってさらに悪化する以前の、細胞骨格や他の細胞の構成要素を本来満たしている、高い振動数の根源的エネルギーによって回復することです。この再生には、自己の内部で起きている反乱を取り除くことが含まれます。そうすれば外部からの病原体が、体内に定着することはできません。自分自身を支える基礎である体を、日ごと磨き上げることを熱心に学び、体が毎日の生活で損なわれたり消耗したり傷ついたりしないよう気を配ることで、この再生を果たすことができます。それは、私たちの心の内側にある〈光〉を燃え立たせ、いつでも最大限に明るい状態に保っておくことを意味しています。なぜならば、〈光〉の中には、健康と強さと幸せと、そしてあらゆるものが存在しているからです。

脚注

1. Allison, A.C.; Denman, A.M.; & Barnes, R.D. (1971) Co-operating and controlling functions of thymus derived lymphocytes in relation to autoimmunity, Lancet 2:135-140.

2. Denman, A.M. (1981) Viruses and autoimmune diseases. Clinics in Immunology and Allergy: Autoimmunity (ed. E.J. Holborow), W. B. Saunders Co., Ltd., London, pages 17-39.

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